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ロッテルダム日本人学校における遠隔合同授業の取り組み ロッテルダム日本人学校 教諭 古山 貴仁

ロッテルダム日本人学校における遠隔合同授業の取り組み ロッテルダム日本人学校 教諭 古山 貴仁

はじめに

ロッテルダム日本人学校(以下、本校)は、在籍人数が小学部・中学部の児童合わせて20名前後の小規模日本人学校である。このような小規模日本人学校においては、学級の在籍児童生徒数が少ないため、多様な人間関係の構築や、活発な意見交換、協働的な学習をすすめることに課題があることが予想される。実際、本校においても、1学級の在籍児童生徒数は1〜5名と少なく、授業の中で多様な考えに触れる機会が少なくなってしまうという現状がある。
このような課題を解決するために、他の小規模日本人学校の児童生徒との遠隔合同授業を実施することが有効であると考えた。2019年より、中南米の4校の日本人学校(アグアスカリエンテス日本人学校、サンホゼ日本人学校、サンパウロ日本人学校、リオデジャネイロ日本人学校)が「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業」の研究助成を受け、遠隔合同授業を実施している。この研究の中では、新しい仲間と一緒に学び多様な意見交換が可能になったことで、児童生徒の学習意欲が高まったり、新たな考えを発見したりする等の成果が得られている。これらの先行事例を参考に、本校においても遠隔合同授業を実施することで、児童生徒にとって非常に有益な学びになると考えた。

今回の報告では、本校と欧州内の2校(ブカレスト日本人学校、ローマ日本人学校)との間で行った遠隔合同授業の実践について紹介する。

はじめに

ロッテルダム日本人学校(以下、本校)は、在籍人数が小学部・中学部の児童合わせて20名前後の小規模日本人学校である。このような小規模日本人学校においては、学級の在籍児童生徒数が少ないため、多様な人間関係の構築や、活発な意見交換、協働的な学習をすすめることに課題があることが予想される。実際、本校においても、1学級の在籍児童生徒数は1〜5名と少なく、授業の中で多様な考えに触れる機会が少なくなってしまうという現状がある。
このような課題を解決するために、他の小規模日本人学校の児童生徒との遠隔合同授業を実施することが有効であると考えた。2019年より、中南米の4校の日本人学校(アグアスカリエンテス日本人学校、サンホゼ日本人学校、サンパウロ日本人学校、リオデジャネイロ日本人学校)が「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業」の研究助成を受け、遠隔合同授業を実施している。この研究の中では、新しい仲間と一緒に学び多様な意見交換が可能になったことで、児童生徒の学習意欲が高まったり、新たな考えを発見したりする等の成果が得られている。これらの先行事例を参考に、本校においても遠隔合同授業を実施することで、児童生徒にとって非常に有益な学びになると考えた。

今回の報告では、本校と欧州内の2校(ブカレスト日本人学校、ローマ日本人学校)との間で行った遠隔合同授業の実践について紹介する。

授業実践1(ブカレスト日本人学校)

〇対象学年・教科
本校小学部2年(2人)と、ブカレスト日本人学校小学部2年(4人)を対象に、国語の授業を実施した。

〇授業実践例

◆アイスブレイク(全1時間)
時程
ロッテルダム 9:15~10:00
ブカレスト 10:15~11:00

授業者
小1・2 担任 棚橋 弘子
機器・接続サポート 古山 貴仁

授業内容
・接続確認(Zoom)
・自己紹介
・感想交流
・ジェスチャーゲーム
・漢字を使った神経衰弱…画面を共有し、スライドを操作しながら実施。

◆国語「馬のおもちゃのつくり方」
全13時間中 2時間(7時間目、13時間目)を遠隔合同授業で実施

〇実際に教科書の馬のおもちゃ作りをする。
・単元の見通しをもつ。
・おもちゃを作ってみて、大切だと思ったことを交流し、学習計画を立てる。
1・2時間

〇「馬のおもちゃの作り方」を読む。
・段落ごとに書かれている内容を捉える。
・順序や書き方の工夫を見つける。
3〜6時間

〇「おもちゃの作り方をせつめいしよう」を読む。
・学習したおもちゃの作り方の説明の仕方の大切なポイントを確認する。
・個々で説時間

明する文章を書き始める。
7時間

〇説明する文章を書く。
・分かりやすくする説明の仕方のポイントに気をつけて書き進める。
8〜12時間

〇おもちゃの作り方を説明し合う。 ・ロッテルダム/ブカレストで自分が選んだおもちゃの作り方を説明する。 13時間

〇実践を行う上で気をつけたこと
(1)意思表示カードの活用
過去の遠隔合同授業の実践を参考にすると、オンライン上での意思疎通を明確にすることが大切である。遠隔合同授業をする上でのデメリットとして、画面を通した授業であるが故に、「相づちをうつ」「質問がある」等の自然なコミュニケーションが取りづらいことがある。この問題を解決するために、意思表示カードを作成した。このようなカードを活用することで、授業の中で自然なやりとりが何度かみられるようになった。

(2)単元計画の工夫
単元の全ての授業を繋いで行うことは難しいため、どの学習内容で遠隔合同授業を行うか吟味した。例えば「馬のおもちゃの作り方」では、実際におもちゃを作るところや、本文を通読するところはそれぞれの学校で実施した。遠隔合同授業では、おもちゃの作り方説明する学習でお互い大切なポイントを確認する、実際に説明し合う授業を実施した。伝える相手を意識することにより、相手に分かりやすく書こう、こんな発表を聞いてもらいたい、というようなモチベーションの向上にも繋がると考えた

〇授業を行った成果
自分たちだけでは思いつかないことが、相手校の子の意見を聞いて気付くことができた。また、自分の考えを相手に発表することで、相手に伝わるように図や文章を選んだり、言葉を選んで説明したりすることもできた。

授業実践2(ローマ日本人学校)

〇対象学年・教科
本校小学部5年(5人)と、ローマ日本人学校小学部5年(1人)を対象に算数の授業を実施した。

〇授業実践例
ねらいを達成できるような単元(教科)を選び、単元計画を立てた。お互いの時程や時間割の都合で、単元すべての時間を合同で行うことはできなかったので、オンラインでの授業日を設定し、授業日以外は学習進度をGoogleドライブで共有していくようにした。
これまでの先行事例で、遠隔合同授業の効果を期待しやすい学習場面として、算数の場合は「発表」「考えや意見の出し合い」「情報の集約」が挙げられている。今回は、多様な解き方を出し合うことのできる、小学校5年生の「四角形と三角形の面積」の単元を扱った。また、単元に入る前に、それぞれの学校の児童の顔合わせとして、自己紹介とアイスブレイクの時間を設けた。

〇授業計画(単元計画)※印が遠隔合同授業
学習内容: ①自己紹介 お互いのことを知ろう
②アイスブレイク

1. 平行四辺形の面積の求め方 平行四辺形の面積の求め方を考えよう。※
2. 平行四辺形の面積を求める公式を見つけよう。※
3. 平行四辺形の面積と高さの関係を調べよう。※
4. 三角形の面積の求め方を考えよう。
5. 三角形の面積を求める公式を考えよう。
6. 三角形の面積と高さの関係を調べよう。 ※
7. いろいろな四角形の面積の求め方 台形の面積の求め方を考えよう。※
8. 台形の面積を求める公式を考えよう。
9. ひし形の面積の求め方を考えよう。
10. 三角形の高さと面積の関係 三角形の底辺と高さの関係を調べよう。
11. まとめ 面積の求め方をマスターしよう。 ※

〇実践を行う上で気をつけたこと
授業は、基本的にZoomをつないで実施した。同じ教科書を使っていることから、教科書ベースでの授業を展開した。問題提示等は、Zoomの共有機能を使い、パワーポイントで示した。授業実践でのポイントは以下の3点である。

(1)教科書のデジタルコンテンツの活用
自力解決の場面では、図形に線を書きこんだり、図形を切り取って 動かしたりする操作を行いながら、面積の求積方法を考えられるようにさせた。また、考えを伝え合う場面でも、自分の考えた方法を操作しながら 示すことで、相手に伝えるための一助とした。

(2)Googleドライブでの情報共有
遠隔合同授業以外の授業日で実施した授業内容(児童から出てきた考えや児童が作った問題等)をGoogleドライブで共有し、学習の進捗状況の確認とともに、場所や時間は違っても同じように学習を進めていることを実感できるようにさせた。

(3)Google Classroomでの話し合い活動
すべての時間を遠隔合同授業で実施することは難しいため、合同で行わないときには、Googleクラスルームを使って、それぞれの学校の進捗状況を共有できるようにした。また、教員が提示した課題について、Googleクラスルーム上で児童たちが意見交換をしたり、質問に答えたりすることで、普段から相手の学校の児童を意識した実践を行うことができた。

児童の考えを一覧にして配布し、次時の授業で活用できるようにした。

〇授業を行った成果
図形の面積の求め方について、それぞれが考えたことを発表し合うことによって、多様な考えに触れることができた。また、相手の考えをもとに自分の考えをさらに深めて説明したり、画面の向こうの相手に伝えるために言葉を選んで表現したりすることができた。
また、ローマ日本人学校の児童との間で関係性ができたことで、この実践の後に行った単元でもとても充実した話し合い活動をすることができた。「帯グラフと円グラフ」の単元では、海外で暮らす自分たちの時間の使い方について、Googleフォームを使ってロッテルダム・ローマ双方の児童にアンケートを実施し、得られたデータを元に、改善点を一緒に考える授業を行った。その際には、どんなデータを取るか、得られた結果をどう分析するのか等、児童たちだけで話し合いをすることができた。また、Google Classroomでも途中経過を伝えたり、打ち合わせをしたりするなど、活発な話し合い活動をすることができた。

おわりに

遠隔合同授業を実施したことによって、普段の学級での授業よりも多様な考えに触れることができたり、発表する機会を増やしたりすることができた。その中でも、他者とのコミュニケーションを意識した活動を多く取り入れ、他者意識を持って相手に自分の考えを伝えることができた点が、大きな成果であったと感じている。例えばローマ日本人学校との算数の授業では、言葉に合わせてデジタルコンテンツを動かしたり、順序立てて説明をしたりと、画面の先の相手にどのようにすれば自分の考え方が伝わるのかを意識し、言葉の使い方や方法などを工夫する様子が多く見られた。
また、児童が他校の児童と授業をするのをとても楽しみにしており、学習のモチベーションの向上にも繋がった。ブカレスト日本人学校と実施したおもちゃ紹介では、ロッテルダムの友達/ブカレストの友達に自分の作ったおもちゃのこんなところを紹介したい、こんな工夫をした、等と、伝える相手がいることで、児童の学習への意欲や主体性の高まる実践を行うことができたと考えている。
今回の実践で得られた成果を生かして、今後も他の小規模日本人学校と遠隔合同授業による実践を積み重ね、児童生徒の協働的な学びに繋げていくことや、他者意識を高めていきたいと考えている。

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