2021.04.14
2020年8月:サンパウロ日本人学校「遠隔合同授業における工夫と難しさ」
ヒアリング:AG5研究補助員 関温理
問い:具体的な取り組みについて
2019年度に本校は、リオデジャネイロ日本人学校(以下:リオ)との遠隔合同授業を実施しました。今回は、そのうちの一つである道徳科学習のお話をします。
本授業を実施するにあたり、リオの先生方と何度もオンラインで授業の打ち合わせを重ね、準備を進めてきました。
まず、始めに国際理解・国際親善をテーマと決め、「同じ空の下」を教材として活用する事にしました。そして、準備を始めてから3ヶ月後の1月に授業を実施することができました。
オンラインで道徳の授業を実施する上で様々な工夫を行いました。
本授業の対象は、本校の小学5年生15名と、リオの小学5・6年生4名で、目標は児童がテーマについて自分の意見を持ち、発言できるようになること、互いに意見を交流して自分の思いを深め、テーマについての考えを練り合うことでした。
そのために、道徳の授業のポイントである子どもの考えが深まる中心発問(ねらいに迫るための決め手となる発問)の場面をしっかり設定し、各児童の意見を導きだすようにしました。
遠隔合同授業のため、児童が発言する事を躊躇う事を想定し、児童が意見を述べやすくするために付箋を活用して、そこに自身の意見を書かせるなどの工夫をしました。そうすることで、彼らの知識や経験が反映した多様な意見を導き出すことができました。
また、2019年度のAG5オンライン合同遠隔教員研修において、岸磨貴子先生に教わったルーブリック評価を導入することで、児童一人ひとりが交流と学習の目当てをしっかり意識して活動にとりくむことができました。
一方で、オンラインでの共同授業の難しさもありました。
そのひとつが、限られた時間内で考えを深め合うことです。
合同で進める導入に時間をとられ、交流の場面では、それぞれの考えを紹介し合う事に終始することとなり、考えを深め、練り合うということができませんでした。通信のズレによって、画面や音声が乱れ、児童の思考が途切れたり、ストレスが生じたりしてしまう場面もいくつかありました。このような時間の問題や通信面でのトラブルを考慮し、「いつ」「どこで」「何をねらいとして」遠隔交流の場面を仕組むかという、授業設計が必要だと感じました。
例えば、導入から終末まで終始オンラインでつなげるのではなく、最初の導入や自身の意見を考える場面は各学校で行い、その後自身の意見を発表し、意見を具体的に深め合うところはオンラインで交流をするということです。
このような課題はありますが、今回の経験や知見を生かして、子どもたちの多様な考えや意見を引き出し、広め合い、深め合えるよう、今後も遠隔合同授業をより一層価値のある時間とするために教員間で密に連携をとりながら研究を進めていきたいと思います。