2021.04.14
2020年9月:サンパウロ日本人学校「学校内でのオンライン授業の経験と知見」
ヒアリング:AG5研究補助員 関温理
問い:学校内の遠隔授業について
新型コロナウィルス拡大防止対策のためはじめた遠隔授業の取組は、遠隔合同授業を進める上で、少なくとも次の4つの観点からその経験と知見を積み上げることができました。
まず1つ目は、遠隔授業の中で生徒の理解度を図ることです。画面越しだと、子どもたちの表情や反応だけでなく、筆記用具を動かすスピードがわかりづらいため、きちんと理解できているのか、学習が定着しているのかを 把握することができませんでした。そこで一週間に一度の学級活動の中でこの課題解決に向けて児童・生徒と話し合い、どのように対処すべきかを考えました。そして リアクションボタンを導入する事にしました。きちんと理解できた児童・生徒は、その都度リアクションボタンを押し先生とコミュニケーションをとる ことで、以前よりも児童・生徒の理解度を把握して、授業を進める 事ができるようになりました。
2つ目に人間関係の構築です。児童・生徒は学校の中で、直接触れ合って、遊んでいく過程の中で、人間関係が築かれます。そのため、オンラインのみでそれをカバーするのは容易では ありませんでした。学習面ではなんとかカバーできても、人間関係を構築することは、非常に難しかったのです。そのため子どもたちの関わりを少しでも増やすために、休み時間に Zoomのホワイトボードを活用して絵を皆で描いてみたり、休み時間にチャット機能を解除して、そこでお話したりしました。最近では、チャット機能を活用して児童 ・生徒がクイズやなぞなぞを出すなどして、とても盛り上がっています。このように少しずつですが、オンライン上でも皆が楽しみながら交流できる可能性を毎日探っています。
3つ目は、授業時間に関しての工夫です。通常中学では、一つの授業で50分ですが、当時30~ 40分という時間内で授業をしなければいけませんでした。そこで、児童・生徒が板書を写す時間をなく すことにしました。 授業中は共有画面を使用し、教師がキーワードのみを伝え、子どもたちと対話をしながら板書を書いていきました。授業後にその板書を共有フォルダにアップロードし、それをみて生徒たちは家庭学習を行います。つまりオンライン上では耳を傾け集中し、家庭学習では板書を確認してじっくりとノートに向かって板書をとることができるのです。 そうすることで、授業のポイントも焦点化され、子どもたちも自身で家庭学習を行わないといけないという意識を育む事ができます。 初めは、授業時間の不安もありましたが、今ではやり方によっては、キーワードが焦点化され、学習効率も良いのではないかと思っています。
4つ目は、遠隔授業という新たな可能性に出会えたことです。初めは、今までの授業スタイルを考え直さないといけなく、大変なことも沢山ありました。しかし考えていくうちに、例えば 授業の中で大切なキーワードを伝えるという事に専念する事で、無駄が省け、結果として学習効率があがるなど良いこともありました。キーワードがしっかりと子どもたちに伝わっている事を実感した時は、オンラインだからこその強みがある事を知りました。また、オンラインで心の交流もできることは驚きでした。児童・生徒の一人が日本に本帰国する際 に、お別れ会をオンライン上で行ったのですが、合唱をしたり、画面上で手を合わせたりして、涙を流している姿をみて、心を通わせることもできるのだと感じました。今では、工夫次第でオンラインの可能性はもっと広げられるのではないかと思っています。オンライン 上でもこのような心の交流ができた事に気づけたことは大きな収穫です。このように、遠隔授業が始まった時には想像もしていなかった遠隔授業の新たな可能性に日々出会っています。
遠隔授業を実施する中で、児童・生徒の遠隔授業に対する喜びの声が保護者から届きました。例えば、「子どもたちが、すごく授業がわかりやすいと言っています!」と言ってもらえた時には、とても嬉しく、遠隔授業ではあるが学習内容の定着もきちんとできているのではないかと感じ、ホッとしました。A G5の研究の中で遠隔合同授業だけでなく、日々の遠隔授業にも取り組み、遠隔での授業を、より有意義な時間となるツールやスキルを学んでいます。この経験を土台に、少しでも多くの子どもたちに還元していきたいです。