2022.02.09
2021年2月:2020年度リオデジャネイロ日本人学校の報告書(抜粋)
リオデジャネイロ日本人学校
校長:渡辺 稔
研究主任:吉村正浩
今月は、2020年度リオデジャネイロ日本人学校の報告書の一部を抜粋して、ご紹介します。
リオデジャネイロ日本人学校
校長:渡辺 稔
研究主任:吉村正浩
ICTを活用した遠隔での教育の質向上のためのプログラム開発
目 的:
ICTを活用した遠隔合同研修会・遠隔授業を通して、教育の質を向上させるためのテーマ設定・研修方法・ICTの効果的活用法を開発する。
研究主題:
多様性を受け入れ、柔軟で豊かなコミュニケーション力をもち、協働できる子どもの育成
遠隔教育 さまざまな授業形態での遠隔授業の実践
A サンパウロ日本人学校との合同授業(①低学年部会、②高学年部会、③中学校部会)
① SP・RJ低学年部会合同授業「しらせたいな・見せたいな」
(小学1・2年国語)
サンパウロ日本人学校の児童のクイズに答える
サンパウロ日本人学校の児童によかった所を伝える
サンパウロ日本人学校の児童にクイズを出す
<成果>
◯ 相手意識をもって活動できた。
- 相手に伝えたい、どう伝わるだろうと思いながら、クイズを考えたり、絵を描いたりできた。クイズを見たり聞いたりした人が、どんな気持ちになるかを考えながら活動した。
- 相手がリオデジャネイロについてどんなことを知っているのだろうかを考え、それ以外の内容でクイズを考えた。
- 相手にクイズがよく分かるように、カメラを見て話すようにしたり、話す言葉を選んだりしていた。
- 絵を見せながら話せるように、絵の裏にクイズの文を書いた紙をはる工夫をした。
- 発表を聞いた相手に感想や質問、よかった所がしっかり言えた。
- 相手の話し方のよかった所について学ぶことができた。
◯ 相手を知る
- 相手の地域のことや学校のことを知ることができ、発表している相手のクイズの内容や発表の仕方の良かったところについて見つけることができた。
- サンパウロのパウリスタ通りやリオデジャネイロのコパカバーナ・ビーチなどいろいろな場所について知ることができた。行ってみたくなった。
- サンパウロ日本人学校の図書室や飼育小屋、リオデジャネイロ日本人学校の人数や秘密の通路など、お互いの学校について知ることができた。まだずっとオンライン授業のため学校の様子を知らないサンパウロ日本人学校の1年生が、リオデジャネイロ日本人学校の1・2年教室の様子を見ることで、学校のイメージが少しできた。
- 「大きな声でスラスラ言えたのがすごい。」「大きな声でゆっくりと言ってくれたので聞きやすかった。」「聞こえにくい時は、もう一度言ってくれて、よくわかりました。」「人の目を見て、ちゃんと話してくれました。」など話し方の良さを見つけられた。
- 相手の学校の子の名前を覚えて、下の名前で呼ぶこともあり、親しくなった。サンパウロの児童から、「リオの1、2年生が入ってくれて、楽しかったです。いい発表会になりました。」という感想もあった。一緒に活動する楽しさが味わえた。
◯ 校内でも協力:
2年生が1年生にクイズづくりや発表のしかたなどのアドバイスをした。2年生もアドバイスすることで成長した。
- サンパウロ日本人学校では、4月からオンライン授業だったので、1年生は学校の様子やブラジルの様子がわからなかった。そこで、クイズづくりを2年生が手伝った。
- 2年生が、1年生に、発表の仕方について、大きな声でゆっくりと話すなどの発表の仕方についてのアドバイスをした。2年生が、1年生の発表の仕方について、良かった点について発表し、1年生もうれしそうだった。
◯ 手立ての工夫:
発表する楽しさを感じ、相手の良さを見つけるための手立てを工夫した。
- この授業の流れや発表する児童の順番と名前、「ともだちのよいところを たくさんみつけて、じぶんもみんなも レベルアップできるかいにしよう!」というこの授業の目標をスライドで示しながら最初に説明したことで、子どもたちに聞くポイントを効果的に伝えられた。
- クイズ発表の半分が終わったときに、この授業で発表する児童の名前を書いたスライドを提示し、これまでの発表について振り返る時間を持ったことは有効であった。
<課題>
◯ 子どもたちにとっての「身近な題材」を選択するのが難しい
- 子どもたちの振り返りの発言から、児童が興味を持つのは「学校に関係すること」が多かった。
② SP・RJ高学年部会合同授業「つながろう、サン・リオ発見プロジェクト」
(RJ小学3、4、6年(4名)、SP小学5年 総合的な学習の時間)
【合同授業】 8:20〜9:00
12月2日(水)SP・RJ合同授業① オリエンテーション、調べるテーマを決める
9日(水)SP・RJ合同授業② 調べる分担を決める
1月29日(金)SP・RJ合同授業③ 調べた内容の交流
2月5日(金)SP・RJ合同授業④ 調べた内容の交流
10日(水)SP・RJ合同授業⑤ 研究授業 クイズを考える
19日(金)SP・RJ合同授業⑥ 発表会準備
26日(金)SP・RJ
今日の学習の流れと活動目標の確認
4つのグループがブレイクアウトルームに分かれて活動をする。
<成果>
◯ 相手意識をもって活動できた。
- 本校の総合的な学習の時間に、「つながろう、サン・リオ発見プロジェクト」で、サンパウロ日本人学校の5年生といっしょに協力して活動するには、どんなことをテーマにすればよいかを話し合うことができた。
- 合同授業のグループ活動で、相手に情報や意見を伝えるだけでなく、相手が調べたことを聞いたり、まとめ方を見たりすることで、お互いに学び合うことができた。
- グループのメンバーと共有しているスライドを見ることで、合同授業以外でも活動状況がわかり、合同授業では、そのスライドをもとにして話し合うことができた。
◯ コミュニケーション力が少しずつ高まってきた。
- 最初、相手校の児童と話すことに消極的な傾向も見られたが、遠隔では、よりコミュニケーションに工夫や努力が必要だと考えている。
- クイズの内容や順番などを話し合ったり、発表会の準備を進める場面では、子どもたち同士で積極的に話し合えるようになってきた。
◯ サンパウロやリオデジャネイロについてより知ることができた。
- サンパウロのことについて、11月には、「あまり知らない」「ほとんど知らない」と答えた児童が60%いたが、2月の発表会後のアンケートでは、「よく知っている」「少し知っている」が100%になった。この活動を通して、児童はサンパウロのことを以前より知ることができたと感じている。また、自分たちの住むリオデジャネイロについても自分で調べたり、他の人が調べた内容についての発表を聞くことにより、もっと知ることができたと感じている。
◯ 相手の学校の児童と話しやすくなった。
- 合同授業を重ねるにつれ、グループでの話し合いもできるようになり、下の名前で呼び合うようになるなど親しくなってきた。
◯ プレゼンを作るなどのICT技能が高まった。
- 情報検索、Googleスライドの作成・編集などの技能が高まった。いろいろな教科学習や行事などでもGoogleスライドを使い、上手にまとめたり、プレゼンしたりできるようになってきた。
<課題>
◯ もっとコミュニケーション力を高めることが必要である。
- 自分の意見を言ったり、相手の話を聞いたりすることは段々とできるようになってきたが、話し合いをしてまとめていく力は、子どもたちも自信が無く十分ではない。
- 経験を重ねるだけでなく、話し合いのスキルを高める活動を国語を中心として、いろいろな学習や行事などの活動で行う。もっとコミュニケーション(聞く、話す、話し合う)力を高める必要がある。
◯ もっと、子どもたちだけで話し合えるようにしたい。
- もっと子どもたちの関係性を深め、話し合いがしやすい雰囲気づくりが必要である。
- 本年度は12月から、SPの5年生との交流を始めたが、来年度は、年度当初から交流を始めたい。
- 話し合う目標や内容、方法がまだ不明確であるから、子どもたちの話し合いが進みにくい。
- 合同授業の回数を増やすだけでなく、話し合う必然性のある場面を設定すると、より活発に話し合える。話し合いの目標や内容、方法について工夫が必要である。
日時
令和2年10月7日(水)リオデジャネイロの日系企業の方による講話
令和2年10月14日(水)在リオデジャネイロ日本国総領事館の方による講話
目標
- 働いている人から直接話を聞くことを通して、働くことの意義や勤労の尊さを体得させるとともに、働く人々の思いや考えを直接聞くことで、職業に対する興味・関心を高める。
- これからの生活での目的意識をもたせるとともに、将来に向けてのより明確な進路希望や今後のより良い進路設計を考える態度をはぐくむ。
- これからの進路設計に生かしていくために、職業に求められる資格や、実際に必要とされる知識や技能について理解させる。
- 働いている人との交流を通して、社会人としての基本的なマナーや言葉づかいを身に付けさせる。
<成果>
◯ 職業人から、仕事に関すること(仕事内容、仕事についた理由、必要な資格、知識・技能、やりがいや苦労)とこれからの学校生活で取り組むべきことについての話を聞き、直接に質問をして、自分の知りたいことを聞けたこと。
◯ この機会を通して、聞く態度や質問の仕方などのマナーを身につけることができた。
◯ 後日、本校のリオタイム発表会(総合的な学習の時間の発表会)で、聞いた内容などをまとめて、発表することがきた。
<課題>
◯ オンラインでの講話で得たことも多いが、直接、職場で話を聞くことができれば、その職場の雰囲気を感じたり、より詳しく質問したり、他の方にも話を聞くことができたのではないか。
- 入学式(式場と控室、各家庭を接続)
- オンライン授業(全員が1人1台の端末で各家庭から接続)
- オンライン授業(対面授業と1家庭を接続)児童生徒が、一時帰国や自粛期間で自宅にいる場合
- オンライン授業(教室にいる児童と教師を接続)教師が、一時帰国や自粛期間で自宅にいる場合
- オンライン授業(3つの教室を接続)児童会、委員会など
- オンライン授業(4つの教室と各家庭を接続)リオタイム報告会
- SP・RJ低学年部会合同授業(対面授業とオンライン授業を接続)
- SP・RJ高学年部会合同授業(4つの教室とオンライン授業を接続)
遠隔研修
D サンパウロ日本人学校との担当者会議、合同研修会、各部会での話し合い
- SP・RJ合同担当者会議共通の研究主題「多様性を受け入れ、柔軟で豊かなコミュニケーション力をもち、協働できる子どもの育成」を設定し、合同研修会を計画し、各部会での合同授業や研究授業、交流授業の方針等を話し合った。
- SP・RJ合同研修会両校の全員で、研究主題を確認し、研究について共通理解するともに、各部会で話し合う機会となった。
- SP・RJ各部会(低学年部会、高学年部会、中学校部会)各部会で教育についての情報交換をするとともに、遠隔合同授業、研究授業、交流授業について話し合い、実践した。
共有サーバーに、両校の時間割表を入れて情報共有して、オンラインでの授業見学をした。授業の方法や子どもたちの様子など、学ぶことが多かった。見学していただいた先生に授業の一部に参加していただくこともあった。授業見学をきっかけに、交流授業を行ったこともある。
後藤先生のコーディネート、岸先生からのご指導により、ピラミッド図などの思考ツールやグラフィックレコーディングなどについて研修したことや、サンパウロ日本人学校だけでなく、サンホセ日本人学校やアグアスカリエンテス日本人学校の先生方から学ぶことが多かった。
G 自校でのオンライン授業や行事についての情報交換、話し合い、研修等
遠隔授業 さまざまな授業形態での遠隔授業の実践
コロナ禍で、4月から自校のオンライン授業が始まり、いろいろな課題が出てきたが、その都度、校内の先生方の情報交換や話し合いなどで解決していった。行事についても、オンラインを活用して、どのような方法でできるかを話し合い、試行錯誤しながら、実施することができた。
<課題>
4月から10月中旬まで、全員が自宅などからのオンライン授業であったため、職員室で会話するように、すぐには情報共有したり、問題解決をしたりすることができなかった。
<解決法>
毎日の職員打ち合わせや職員会議に加え、遠隔教育に関する校内での情報交換の方法として「PMIQシート」を共有した。「PMIQシート」は、Googleスプレッドシートで作成した。本校の教師で、遠隔授業に関する、「P(良い・分かったこと)、M(課題)、I(面白い・工夫)、Q(問い)」や「連絡板」に自由に記入し、情報を伝えたり、意見を交換したりするために使用した。
これは、サンホセ日本人学校の実践を参考にした。1週間ごとに1シートとし、教師が、困った時や、解決方法が分かった時、共有する情報がある時などに書き込めたので、オンライン授業をみんなで実施する上で、有効だった。
本年度は、新型コロナの影響で、4月から、オンライン授業を実施することになった。前年度からの積み上げもあり、遠隔授業を早期に開始することができた。サンパウロ日本人学校と一緒に、研究主題「多様性を受け入れ、柔軟で豊かなコミュニケーション力をもち、協働できる子どもの育成」を決定し、3つの部会に別れて合同授業を行うなどの実践ができた。子どもたちは、いろいろな意見を聞いて、話し合う機会が増えてきたことにより、少しずつではあるが、多様性を受け入れ、柔軟で豊かなコミュニケーション力を高めていっている。
また、数多くのオンライン授業をする中で、さまざまな遠隔授業の形態を行い、いろいろな課題が見えてきた。その一つひとつについて改善策を工夫していった。
今年度の本校の課題として、「子どもも教師も、もっと人間関係づくりが必要である」「相手に言う側の体験はできたが、みんなの話をまとめる側の体験は不十分である」「合同授業での活動が、調べて、まとめて、発表する活動で終わっている」「協働する場面づくりが不十分ではないか」などが挙げられる。