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テーマ6.

学校図書館を活用した文化交流

西大和学園カリフォルニア校での取り組み(日本文化を発信するためのイベントと関連する図書等の貸し出し)

西大和学園カリフォルニア校での2018年度の取り組みを紹介します。

INDEX

1.イベントテーマに関連させた書籍等の整備

今年度の主な発信テーマである「けん玉・俳句・都道府県名産品・日系人の歴史・オリンピック・パラリンピック・茶道等」に関するコーナーを設け、書籍・DVD・カルタの貸し出しや調べ学習が行いやすいように整備しました。

 

 

2.日本文化発信活動

表1は西大和学園カリフォルニア校(以下NAC)が2018年度に図書館や図書を活用した活動の実施内容です。

表1: 活動実施一覧

実施日

実施内容

主催者等

1

5/30/2018

日系人の歴史学習に関する資料説明

NAC中学部

2

7/7/2018

日本の遊びにふれよう (けん玉・かるた・紙芝居)

NAC補習校

3

7/10/2018

ロサンゼルス七夕祭りを活用した広報活動

LA七夕祭り実行委員会・NAC中学部

4

8/28-31

Japanese Cultural Summer Program (1-4年生対象)

(けん玉・藍染・和太鼓・ボッチャ・東京五輪音頭)

ASANO太鼓・藍染の会ASAGI

NAC小学部

5

9/19・26

移動図書による大学生対象の読書会

南カリフォルニア大学 (USC)
Japanese American Student Association

6

11/16/2018

講演「豆腐の米国普及について」

Super Frec USA 雲田康夫氏

7

12/13/2018

移動図書による中学生対象の交流活動

NAC中学部・Campbell Hall School

8

2/2/2019

NAC Japanese Cultural Fair (けん玉・俳句・都道府県名産品・オリンピック・パラリンピック・日系人の歴史・茶道・日英読み聞かせ)

NAC小中学部・茶道の会小川社中・南加県人会協議会・生け花の会

9

2/23/2019

第2回ロサンゼルス地区高校生日本語スピーチコンテスト

海外日本語教育を応援する会

10

2/26/2019

図書を活用した中学生対象の交流活動

NAC中学部・Campbell Hall School

写真は日系人の歴史学習に関する資料説明の様子

3.外部者参加の推進

日本文化を発信する場合、発信者は該当する文化要素についての理解が深く参考図書を活用できることが理想的であるため、日系人講師、県人会、平日校の教員、生活科・社会科・総合的な学習で文化習得をした児童生徒を発信者として事業を計画しました。
つまり、講師は日本語の方が強いJapanese –Dominant (JD)である場合が多く、聞き手が基本的な日本語を使用しないEnglish–Dominant (ED)である場合は、発信内容の要約を英語で準備する、通訳を加配する、発信者が英語でも説明できるようにする、などの言語バリアを取り除く工夫が必要です。

 

今年度の活動のうち、実施時に用いた言語と外部者の参加人数をまとめると表2のようになります。
活動6のように、興味深い実施内容であっても、該当する分野に精通した通訳が手配できずに近隣校が参加しなかった場合もありました。

一方、活動4のように、広報の時点からすべて英語で行い(図1)実施内容が言語バリアの低い参加型活動で、英語通訳を加配した場合は、EDの外部参加者を増やすことができました。

 
そこで更なる外部参加者の推進を目的とした活動8では、英語要約、通訳、英語での発信と3種類の方法を活用しました。

例えば日本の五輪選手の熱意を描いた物語を劇化して説明した際は、ELD(旧ESL)教員が英語で作成したあらすじをスクリーンに映し出し、児童の説明は日本語で行いました。

 

また、団体で来校した現地校教員には英語通訳ガイドが案内を行い、さらに茶道・俳句・都道府県名産品の説明については、英語または日本語で書かれた書籍から説明を起こし本校の30%を占めるED児童が英語で細部にわたって解説しました。

 
また、英語科と連携をとり1年は「けん玉の技」、6年は「1964年と2020年の東京オリンピックの比較」、8年は「日系人の歴史」を英語スピーチとして仕上げ、コンテストを通してJDである駐在員子女が英語で発信できるよう試みました。

  
更に今年度はより広い地域に広報ができるよう改善しました。

まずロサンゼルスのリトル東京において、日系人や日本文化に興味がある人たちが集まる日系二世ウィークの七夕祭りに学習の成果(日系人の歴史)を出展し、本研究と本校の図書館について広報しました。

 

2018年の七夕祭りは総出展数が155作品、動員数が3万人と非常に大きな規模であり、このような地域行事にて、七夕飾りコンテスト「Spirit of Togetherness部門」2位に入選することで本事業の広報を行うという流れを生み出すことができました。
また、この結果が戦前から日系コミュニティーの中心的役割を担ってきた「羅府新報」に取り上げられ、更に広い地域に本校図書について広報することができました。

 

次に、活動8の広報ではカリフォルニア州の日本語教師会のネットワークを活用してチラシを配信しました。教育関係者に特化した広報は非常に効果的で、活動8が120名の外部者参加を得た一因ともなっています。

 

最後に、日英バイリンガルでの広報を効率よく行う手段としてFacebookを活用しました。Facebookへのアクセス数を分析すると通常114のフォロワーが記事を英語に訳して読んでおり、日本語を使用しない層への広報が有効に行われたことがわかります。

 

表2:活動実施時の言語と外部者参加人数

実施内容

実施言語

外部参加者

1

日系人の歴史学習に関する資料説明

日本語

3名

2

日本の遊びにふれよう (けん玉・かるた・紙芝居)

日本語

0名

3

ロサンゼルス七夕祭りを活用した広報活動

日本語

7名

4

Japanese Cultural Summer Program (1-4年生対象)

(けん玉・藍染・和太鼓・ボッチャ・東京五輪音頭)

日本語・英語通訳

12名

5

移動図書による大学生対象の読書会

英語

20名

6

講演「豆腐の米国普及について」

日本語

1名

7

移動図書による中学生対象の交流活動

英語

40名

8

NAC Japanese Cultural Fair (けん玉・俳句・都道府県名産品・オリンピック・パラリンピック・日系人の歴史・茶道・バイリンガル読み聞かせ)

日本語・英語通訳

120名

9

第2回ロサンゼルス地区高校生日本語スピーチコンテスト

日本語・英語

80名

10

図書を活用した中学生対象の交流活動

英語

43名

 

4.外部者に向けた図書貸し出しの推進

外部者に向けた図書の貸し出しを推進するために、今年度は図書を送付するサービスを行いニーズ調査を図りました。

上記の活動5のようにある程度の日本語力が見込まれる大学生を対象にする場合と、活動7のように日本語を第二外国語として学習している現地校中学生を対象にした2例の図書送付サービスを実施しました。

活動5では図書に関する解説は行わず貸出のみ行い、活動7では英語による図書の解説(Book Review)を第5-9学年の英語の授業で作成し、各図書に興味付けを行って貸し出しを実施しました。

貸し出し図書の種類としては、言語力と認知力を考慮し、活動5の大学生向けには文化比較ができる内容の図書を、活動7の中学生向けにはひらがなで読める絵本を中心に貸し出しを行いました。

 

貸し出し後のアンケートによると、活動5のように、知日家の大学生であっても日本語を教育機関等で学んだ年数は3年以下の場合が多く、87%が家庭で日本語を使用していないためフリガナがふってある本・マンガや図が多い本であれば読みやすいと回答しています。

文化理解については日本の職業観や価値観などについても図書を通じて考察することができたようです。

 

下記5の団体Japanese American Student Associationはカリフォルニア州の主要大学にあり(表3)定期的に集会を開催しているため、移動図書の形式であれば利用者の候補となりうるかと考えます。また、NAC補習校の卒業生が進学する大学が多く含まれているため彼らに窓口になってもらうことも可能です。

 

表3: Japanese American Student Associationがある大学

略称

大学名

住所

1

USC

University of Southern California

3601 Trousdale Parkway Student Union 301 Los Angeles, CA 90089

2

UCLA

University of California Los Angeles

405 Hilgard Avenue Los Angeles, CA 90095

3

CSULB

California State University Long Beach

1250 Bellflower Blvd, Long Beach, CA 90840

4

UCSB

University of California Santa Barbara

UC Santa Barbara Santa Barbara, California 93106

5

UCI

University of California Irvine

510 E Peltason Dr.Irvine, California 92697

6

UCSD

University of California San Diego

9500 Gilman Dr, La Jolla, CA 92093

7

SDSU

San Diego State University

5500 Campanile Dr, San Diego, CA 92182

8

LMU

Loyola Marymount University

1 Loyola Marymount University Dr, Los Angeles, CA 9004

9

CSUF

California State University Fullerton

800 N State College Blvd, Fullerton, CA 92831

10

CSULA

California State University Los Angeles

 5151 State University Dr, Los Angeles, CA 90032

11

CSUSB

California State University San Bernardino

5500 University Pkwy, San Bernardino, CA 92407

12

UCR

University of California Riverside

900 University Ave, Riverside, CA 92521

13

Chapman

Chapman University

1 University Dr, Orange, CA 92866

 

最後に、英語でも日本語でも出版されているバイリンガル図書は絵本から小説まで整備したので、どちらの言語を学習している者にとっても活用しやすいはずであると考えます。

 

今年度はバイリンガル読み聞かせ会を開催して図書の紹介を行いました。

日英図書の一文ずつが正確に対応していない箇所があるため、活動8で行ったバイリンガル読み聞かせでは1ページずつを読み聞かせる形式で実施しました。

 

JDにとっては日本語の本がどのような英語表現で翻訳されるのかがわかり、大変興味深い読み聞かせとなりました。一方、漢字にバリアがあるEDにとっては、自分では読みにくい日本語の本にも読み聞かせ会で触れることができました。

5.貸し出し数について

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