2021.04.14
遠隔合同授業の知恵の蔵(パターンランゲージ)
1.パターンランゲージとは?
AG5では、2019〜2021年の3年間、中南米の日本人学校4校(サンパウロ日本人学校、リオデジャネイロ日本人学校、サンホセ日本人学校、アグアスカリエンテス日本人学校)と共に遠隔合同授業の実践研究に取り組んできました。遠隔合同授業において教師が直面した様々な課題を明らかにし、その一つひとつの対応策を考え、実践してきました。
その中で、成功した事例のうち、繰り返し見られる「パターン」がいくつかでてきました。それらを「問題状況/解決のアクション/その結果」の3観点から簡潔に言語化、イラスト化して、知見をパターンとしてまとめたのが、このAG5遠隔合同授業の「知恵の蔵」です。
問題解決への対応策といっても、どの教室、どの授業にも当てはまる理論があるわけではありません。この「知恵の蔵」は、問題状況に対する多様なアイディアが示されています。取扱説明書で使い方の例を示していますが、主に、遠隔合同授業について会話を始めるきっかけとして活用いただければ幸いです。
2.なぜ、知恵の蔵としてまとめたのか?
「知恵の蔵」は、パターンランゲージをもとに制作をしています。パターンランゲージとは、状況に応じた判断の成功の経験則を記述したものです。成功している事例の中で繰り返し見られる「パターン」が抽出され、抽象化を経て言語化(ランゲージ)されたものです。
「こうすれば、こうなる」というものではなく、こんなやりかたがあるのか!他の方法もあるかな?と教師たちが遠隔合同授業について会話をはじめるためのきっかけをつくりました。何からはじめればいいかわからない時、やってみてわからないことがあった時、パターンランゲージをみて「こんな方法があったのか」と参考にしてみてください。
3.誰が作ったの?
AG5では、遠隔合同授業のパターンランゲージを合計で28枚作成しました。本研究チームである、サンホセ日本人学校、アグアスカリエンテ日本人学校、サンパウロ日本人学校、リオネジャネイロ日本人学校の実践から生まれてきたものです。毎月、4校が集まるオンラインでの合同遠隔研修会での実践報告を通して「困りごと」「解決のためのアクション」「その結果」を共有し、言語化していきました。
そして、その知見を視覚翻訳家の黒木歩さんがイラストで示しまとめたものが、AG5「知恵の蔵」です。
4.どうやってみるの?
知恵の蔵の見方は、図1のとおりです。
まず、遠隔合同授業における実践者が直面した「困りご と」が一番上に示されています。そして、それを解決する「アクション」が真ん中に示されていま す。そしてその結果、どのような「状態」になったかを一番下に示しています。
図1:知恵の蔵のみかた(クリックで大きな画像を表示します)
★パッケージに含まれるもの★
知恵の蔵の一覧表は、下記の表1~3の通りです。表1は「遠隔合同授業の設計」について、表2は「児童生徒の多様性を発揮させる学習環境デザイン」、表3は「対話的、協働的な学習支援」に関するものです。これ を印刷しパッケージ化したものを、海外の日本人学校に配布しています。
5.開発したパターンランゲージ
下記からご利用ください。
「困りごと」から探す
先 生
- オンラインでは机間指導ができず、ノート指導もやりづらい。
- 子どもからたくさんの意見が出てきて、まとまらない。
- 説明になんでもかんでも画面共有で見せていたらさっきのもう一度見せて」などの声が多く出て授業が進まない。
- 教師は、経験したことがない、やり方がわからないことに取り組むことに困難や不安を感じ、動けなくなることがある。
- 教師が見せたいものを子どもが見ているかわからず不安を感じる。
- 毎時の授業で振り返りの時間を設けたいが時間と手間がかかる。
子ども
先 生
子ども
- 全体に対して意見を求めても意見が生まれてこない。
- 子どもが振り返りで、何を書けばいいのかが分からない。
- 示した課題に対して、子どもがワクワクしていない。
- 子どもがテーマに対して関心が持てず、意欲が湧かない。
- 経験したことがない創作 活動(音楽制作、映像制 作など)のハードルが高く、やろうとする気にな れない。
- オンライン上では、発言がしづらく、沈黙の時間が多い。
- 子どもは教室とは違って学校生活に必要な情報がどこにあるのか、何があるのか、オンライン上だと把握しきれない。
- ついつい教室にいる子ども同士だけで話してしまい、その会話や発言を遠隔地の子どもに届けられていない。
先 生
- 対話的な授業の展開にならない。
- 子どもに同時に共同作業をさせたいが、時差や教室に入れる人数制限の関係で難しい。
- 遠隔合同授業では、それぞれの状況や環境が違うため学習のペースや指導方法にずれが生じることがある。
- オンライン上での情報交換で、意見が多すぎて、どれを取り上げればいい か判断するのに時間がかかってしまう。
子ども
- 話し合いで意見がなかなか出なかったり、論点がずれたりする。
- 教師なしでは、話し合いを進めることができない。
- 遠隔地の人たちと合同で授業をしている実感がわかない。
- 教師の問いかけに対して、子どもが「自分ごと」として意見をなかなか出せない。
- 遠隔地との協働学習の時、時差や時間割の違いから非同期型で行うことがあるが、同期型と違って一緒にやっている感覚を持ちにくい。
パターンカードを見る
遠隔合同授業の設計(ID):9枚
児童生徒の多様性を発揮させる学習環境デザイン:10枚
対話的、協動的な学習支援:9枚
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