2022.03.22
2021年度の取組みと成果
1.研究の目的・意義
インクルーシブ教育においては、障害のある児童生徒と共に学ぶことが求められており、海外であっても共に学べる状況が作られるよう、日本人学校に対する支援の方法を考え、提供することが必要です。
そこで、在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業(AG5)では、「特別支援教育に関する遠隔支援実施に向けた実践的研究」をテーマとし、2019年度から3年間の計画で日本人学校を遠隔で支援するためのシステム作り、システムの条件整備と実施方法の 整理、遠隔支援コンサルテーションマニュアルの作成を目的として、研究を行うこととなりました。
2021年度の実践内容は以下のとおりです。
①遠隔支援コンサルテーションの検証
②AG5(特別支援教育)事業報告会の開催
③遠隔支援コンサルテーションマニュアルの作成
④AG5(特別支援教育)事業報告書の作成
2.研究の背景
文部科学省と国立特別支援教育総合研究所が2021年5月に実施した日本人学校教育課程等実施状況(特別支援教育関係)調査によると、日本人学校に在籍する、障害の診断のある児童生徒は184 名、診断はないが特別な支援を必要とする児童生徒は429 名という結果でした。
これらを考慮すると、日本人学校においても特別な配慮を必要とする児童生徒は増加の傾向が伺えます。
校内の支援体制については、回答した日本人学校95校中、校内委員会を設置している学校は68校、特別支援教育コーディネーターを指名している学校は61校、子どもの実態把握を行っているのは74 校、個別の指導計画が作成されているのは54校、特別支援教育に関する研修を行っている学校は61 校という結果でした。
校内の支援体制としては、校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの指名等が行われて、体制の整備が進んでいる状況が分かりました。
今後、日本人学校においても日本国内にある学校と同様に、特別支援教育の充実を進め、特別支援教育の支援体制を構築・推進していくことが喫緊の課題となっています。
3.研究提携校並びに協力校
(海外)日本人学校
・北京日本人学校(中国)
・ハノイ日本人学校(ベトナム)
・香港日本人学校(香港)
(日本)特別支援学校
・筑波大学附属大塚特別支援学校
・埼玉大学教育学部附属特別支援学校
・東京都立調布特別支援学校(2019年度オブザーバー)
・横浜市立日野中央高等特別支援学校(2021年度オブザーバー)
4.2021年度の成果
(1)遠隔支援コンサルテーションの実践
北京日本人学校 5回実施
ハノイ日本人学校 4回実施
※遠隔支援コンサルテーションの成果等については、「研究成果報告書 第3章 遠隔支援コンサルテーションの実践研究の報告」(P.27~P.42)をご覧ください。
(2)遠隔支援コンサルテーションを行った日本人学校と日本の特別支援学校からの感想(抜粋)
【日本人学校】
・遠隔支援コンサルテーションを実施することで、日本の特別支援学校の豊富な知識と高度な専門性を享受することができた。
・遠隔支援コンサルテーションによるアドバイスを実践した結果、児童生徒の行動が改善され、教員の変化もあった。
【特別支援学校】
・遠隔支援コンサルテーションを実施することで、児童生徒の状況を理解するには、日本人学校との丁寧なやりとりが必要であることや海外特有の背景を知ることが重要であることを知ることができた。また、日本人学校の先生方の一生懸命な取組に感銘を受けた。
(3)AG5(特別支援教育)事業報告会
「AG5事業報告会~日本人学校における特別支援教育に関する遠隔支援について~」の開催
・日時 2021 年11 月13 日(土) オンライン(Zoom)で実施
・参加者合計 119 名
※AG5事業報告会については、「研究成果報告書 第5章AG5 事業報告会」(P.51~P.65)をご覧ください。
(4)「遠隔支援コンサルテーションマニュアル」の作成
(5)AG5(特別支援教育)事業報告書の作成
5.報告書
『日本人学校における特別支援教育に関する 遠隔指導の実施に向けた実践的研究』(2019 年度~2021 年度)
研究成果報告書(PDF)は以下からご覧いただけます。
【引用文献】
・外務省(2019)海外在留邦人数調査統計
・国立特別支援教育総合研究所(2009)調査研究報告書
「日本人学校および補習授業校における特別支援教育の推進状況に関する調査研究」
・文部科学省(2019)特別支援教育資料(平成29年度)
コメント