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発表ブース一般投稿

本ページでは、日本国内外の教員や教育関係者の皆様の研究成果や教育実践の取組事例などをご紹介いたします。
年間のカリキュラム案、単元の指導案、さまざまな研究成果などを発信する場として幅広くご活用ください。

補習校の児童のための「一つの花」(場面をくらべて読もう)の展開 ~ホーチミン補習校で~

ワシントン日本語学校 校長 森 宏介

補習校での授業の実際の様子を想像できる「シナリオ型指導案」です。

INDEX

1.単元の指導にあたって

◆ 単元 場面をくらべて読もう (題材:一つの花) 

 

◆ 指導にあたって

○ 当然の事ながら、指導者は、ホーチミン補習校の子どもの実態について無知である。しかしながら、児童の実態を想像しつつ、指導案を組み立ててみることにする。2年前、学校を訪問した折、経験豊富な先生が、現4年生(当時2年生)の子どもを前に、苦心しながら、授業を展開なさっている姿を目にした。その折りに見た子どもの日本語力の差はかなり大いと感じた。その後、退学や途中入学で多くの子どもが入れ替わっているであろうが、現在も、学習に必要な日本語力を得ている子どももいれば、継承語の域を脱していない子どももいるにちがいない。反面、ほとんどの子どもは、年齢相応の認識力を習得しているであろう。それらを前提にすると、日本語の習得状況に差があることを認識したうえで適切な手だてを講じるという前提条件付きではあるが、読みのねらいについては、「場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像して読むこと」(学習指導要領内容C(1)-ウ)に近づく授業は不可能ではないと考える。

 

○ 本単元で取り扱う題材「一つの花」は、ゆみ子と彼女をとりまく家族の運命を象徴する3つの場面を描くことで、戦争の悲しさや子を思う親の心を読み手に伝える作品である。二十一世紀を迎え、世界が平和と共生を希求しているにもかかわらず、未だに地球上では戦火が絶えることはない。また、足かけ15年にわたり続いたベトナム戦争集結から35年、日本と同様、この地においても戦争体験が風化し始めているのではないかと感じさせられる。そのような中、この作品を読むことを通して、戦争がもたらす結末の悲しさや、親が子を思う心を多少なりとも想像させることは、子どもたちにとって価値ある学びとなるに違いない。

 

 次に内容の分析を試みる。「一つの花」は、まだ、戦争がはげしかったころのゆみ子の家庭の様子を記した第1場面、お父さんが戦争に行く日の様子について書いた第2場面、それから10年の年月が過ぎたある日のゆみ子の家庭の姿を描写した第3場面で構成されている。また、物語全体を通して、対になる表現が散在していることに加え、場面ごと、あるいは場面相互に比較対照すると、双方の様子が浮き彫りになる効果をもつ表現が散りばめられている。それらの表現に着目することで、戦争中と戦争後の比較はもちろん、父母のゆみ子に対する思いを叙述に即して読んでいくことができる。したがって、上記の学習指導要領のねらいに近づくには格好の教材であると言える。

 

 ○ 前述した児童の実態及び教材の特性に鑑み、本単元の指導にあたっては、次の手だてを講じる。

 本学級の子どもたちの中には、読む力、特に漢字力が十分でない子どもがいるに違いない。そこで、場面ごとに読み深める前に、教科書の挿絵と指導者が作成したあらすじを示す短文を活用し、物語の全体像をつかませることにしたい。その折り、できる限りの時間をとり、本文の朗読にも取り組ませたい。また、家庭でも本文の音読をするように指示しておくことも大切である。

 

 場面ごとに読み深める段階では、それぞれ、次のことがらを対比し、その違いがもつ意味について考えさせることを通して内容に迫る。その際、第2場面においては、一つの花にこめられたお父さんの思いや願いを叙述に基づき想像するとともに、第3場面においては、一つの花という題名を選んだ作者の思いについて

  考えるようにしたい。

 

 第1場面:戦争のはげしかったころの食べ物(いも等)と現代の食べ物(おまんじゅう等)

 第2場面:ゆみ子の家族の出征時の様子(静か)と他の人々の様子(にぎやか)

 第3場面:出征時にもらった「一つの花」(1本)とコスモスのトンネル(咲き乱れる花)

2.単元の目標

 ○登場人物や場面の様子を文中の言葉に着目しながら想像して読むことができる。

 ○題名にこめられた作者の思いについて考え、自分なりの考えをもつことができる。

3.指導計画(4時間)

 ○物語に使われる言葉の意味を知るとともに全文を通読し、物語のあらすじをつかむ。   (1時間)

 ○戦争のはげしかったころの食べ物と現代の食べ物を対比しながら、第1場面を読み深める。(1時間)

 ○一つの花にこめられたお父さんの思いや願いを想像しながら第2場面を読み深める。   (1時間)

 ○第3場面の情景を想像しながら、一つの花にこめられた作者の思いについて考える。   (1時間)

本時案(第1時)

本時案(第2時)

4.ワークシート

学習シート

あらすじ

5.参考資料

教師研修展開案(児童への指示の仕方)

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