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発表ブース一般投稿

本ページでは、日本国内外の教員や教育関係者の皆様の研究成果や教育実践の取組事例などをご紹介いたします。
年間のカリキュラム案、単元の指導案、さまざまな研究成果などを発信する場として幅広くご活用ください。

オンライン授業の可能性

ワシントン日本語学校 校長 森 宏介

ワシントン日本語学校の校長が行ったオンライン特別授業の簡単な記録である。授業の実際は、それぞれの単元ごとの➀指導案、➁ワークシート、➂スライドを見てイメージしていただければと思う。

INDEX

1.オンライン授業実践に至るまでの経緯

令和2年3月上旬、学校所在地のメリーランド州は、緊急事態宣言を発令。中旬には、このエリアを管轄する教育委員会が全公立学校の休校を決定した。その後、現地校は8月まで学校を閉じることになったため、本校も同様に休校措置をとることを決めるとともに、新年度の4月から6月末までオンライン授業で対応することにした。
小学部は当初は、1授業日あたり国語2時間、算数2時間、理科または社会科2時間(計6時間)の授業時数を確保するはずであったが、オンライン授業における実指導時間は2時間。しかも国語と算数のみに限定せざるを得なかった。しかも、本来であれば、社会科や理科の学習をしていたはずの午後はすっぽりと空いている。逆に考えると特別授業を仕組む時間はたっぷりとあることになる。そんな時、私の中に潜む教師の虫の声「俺もやってみたい」が聞こえた。管理職になって18年。その間、ほとんど授業をすることのなかった私である。しかも、教員時代は黒板を背にチョーク1本勝負の授業ばかりであったが、「これも新たな挑戦」と考え、オンラインで試しの授業に取り組むことを思い立った。

2.取組の実際

(1)実践単元の検討
教科指導を目的とするものではなく、自分自身がオンライン授業の可能性を体感することを目的としたため、小学校6年、5年、3・4年の単元から1つずつ、児童が興味をもちそうなもの、教師と子供が楽しくやりとりをしながら学習を展開できそうな単元に目を付けた。


(2)トピックを選ぶにあたってのコンセプト
1単位時間(45分)で完結させなければならない学びである。子供にとって面白いと感じるものであることはもちろんであるが、その中に考える場面が盛り込まれていることが大切である。また、オンライン学習の可能性を試すという観点から、ZOOMのブレークアウト機能を使って少人数のグループワークにも取り組むことが可能なものという条件も付加した。結果として、6年歴史「むらからくにへ(弥生時代)」5年「くらしの中の情報(コンビニのネットワーク)」3・4年「いろいろな土地のくらし」からトピックを一つだけ選び出し授業を構成することにした。
 
(3)授業参加者の募集方法
毎週発行している学校だよりで対象学年と単元名を発表。本校ホームページ上にフォームサイトを作成し、希望者に学年・学級、氏名、メールアドレス等を記入してもらう形で参加者を募集した。その際、オンライン授業の特性上参加者総数の上限を20名とした。参加希望者には、授業の2日前に、ミーティングID及びパスワードを送付した。
 
(4)授業の実際
私はかつて、社会科用語が理解できずに苦しんでいる子供に出会ってきた。「支える」という言葉は、一般に「物が倒れたり落ちたりしないように押さえたりつっぱったりすること」の意で使われるが、社会科で多用される「支える」は、「くらしを支える情報」のように「土台になっている」という意味であり、日常生活で用いる言葉とは異なる意味をもつことが多い。ましてや本校の中には、日本語が弱い子どももいる。そのため、授業を始めるにあたって、用語を抑えることからはじめることが必要と考えた。また、画面を通しての授業であるため、教師の顔を眺めながらの授業ではなく、図や写真などを駆使したビジュアルでカラフルにすることが大切である。そのため、パワーポイントのスライドを見せながらやりとりをする方式を採用した。また、理解度を高めるためには、音声付きの動画が役に立つと考えた。そこで、デジタル教科書に資料として組み込まれているショートムービーや「NHK for school」を授業の中に取り入れることにした。もちろん通常の授業と同様、課題を与えグループワークもさせることにした。 授業の概要については、資料(指導案)をご覧いただきたい。

■小学3・4年生

 ・指導案「いろいろな土地のくらし」

 ・スライド「いろいろな土地のくらし」

 ・ワークシート「いろいろな土地のくらし」

■小学5年生

 ・指導案「くらしのなかの情報」

 ・スライド「くらしのなかの情報」

 ・ワークシート「くらしのなかの情報」

■小学6年生

 ・指導案「むらからくにへ」

 ・スライド「むらからくにへ」

 ・ワークシート「むらからくにへ」

3.オンライン授業の可能性について

私は、オンライン授業を試すことで、以下の4つの可能性を体感しようと考えていた。以後、それについての私の感想を述べる。


①対面授業と同じように子どもとのやりとりを通した授業が展開できるか
結論から言えば、子供とのやりとりを楽しみながら授業をすることは可能である。ただし、教師と子供がZOOMの画面を共有した場合、教師は子供の様子を確認することができない。この問題点は、拡張モニターを使用し、参加者画面を別のモニターに映し出すことで解消することができた。
 
②子供が集中して学習に取り組むことができるか
授業内容の仕組み方にもよるであろうが、子供たちは対面授業と同様、集中して学習に取り組んでいたという実感を味わうことが出来た。パワーポイントのスライドを活用した授業展開は効果的であったと考える。
 
③オンライン授業でもグループワーク等の協働場面を効果的に仕組むことができるか
ZOOMのブレイクアウトルームを使うと、任意の数のグループを瞬時につくることができる。グループ構成にあたり配慮が必要な場合もマニュアルで対応できる。取り組むべき課題が明確で、子供の興味関心に寄り添ったものであれば、会話が弾み、効果的なセッションを期待することができそうである。
 
④動画教材を効果的に使用することができるか
ZOOMは画像だけでなく音声も共有できる。教室で活用する視聴覚教材と同じような感覚で簡単に動画を再生することができるのでお勧めである。
 

4.まとめ

以上、述べてきたように、オンライン学習はかなりの可能性を秘めている。 子供のタイピング能力さえ十分であればGoogle Classroomを使って課題を共有することも可能となり、Google Form を使った評価もできるようになる。夏休み以降も、様々な機会を通して、オンライン授業の可能性を確かめていきたいと考えている。

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