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発表ブース一般投稿

本ページでは、日本国内外の教員や教育関係者の皆様の研究成果や教育実践の取組事例などをご紹介いたします。
年間のカリキュラム案、単元の指導案、さまざまな研究成果などを発信する場として幅広くご活用ください。

香港における継承日本語科の授業実践◆課題解決のアイデア

香港日本人補習授業校 磯村 望

香港日本人補習授業校「継承日本語科」の授業実践です。日本語の力がちがう子どもたちが楽しく学べるようにいろいろな知恵と工夫があります。「日本語ウォームアップ活動」は、どこでもすぐに使えます。

INDEX

1.香港日本人補習授業校の概要

 香港日本人補習授業校は、香港内唯一の補習校です。2つの学習コースを備え、以下のように運営しています。

 (※ 詳しくは下記のウェブサイトをご覧ください。)

香港日本人補習授業校ウェブサイト

  

(1) 学校の概要

 ・ 児童数:約180名

 ・ 学級数:13学級(幼稚部2学級, レベルクラス6学級, 継承日本語科5学級)

 ・ 教員数:27名(各クラス学級担任+補助教員を有償で採用)

 ・ 授業数:36週(毎週土曜日の午前3時間)

  

(2) 運営

 ・ 組織体制:保護者による運営委員会を中心とした、香港YMCA及び学習塾との協力体制で運営

 ・ 教育理念:世界に生きる日本人としての自覚・誇り

 ・ 教育目標:

  ①バランス感覚の取れたグローバルな人材育成

  ②ことばを主体的に学び取り、アイデンティティを構築できる人材育成

 ・ 学校行事:運動会、学習発表会、餅つき大会が3大行事

  

(3) 2つの学習コース ―レベルクラスと継承日本語科―

  <レベルクラス>

 ・ 目標:国語と他教科(算数、生活、社会、理科など)の指導を通して、日本語による知識や概念を習得する。

 ・ 教材:日本の小学校の教科書

 ・ 指導方法:日本語で考え、表現する力を高める日本式授業スタイル

 ・ 指導者:教科担任

 ・ 学習科目:国語1,国語2,総合(社会,理科,生活,算数)

  

 <継承日本語科>

 ・ 目標:香港で育つ子どもたちの実情に合わせて、教科を横断的に学習し、日本語力を高める。

 ・ 教材:当校のオリジナル教材

 ・ 指導方法:探求型の学習活動に日本語を通して参加する、トピック型学習スタイル

 ・ 指導者:学級担任

 ・ 学習科目:テーマ学習,国語活動

  

2.継承日本語科の授業実践

 継承日本語科では、オリジナル教材を使ったテーマ学習と国語活動を進めています。具体的な取り組みをご紹介いたします。

  

(1) テーマ学習

 ① テーマ学習とは

  ・テーマベースの調べ学習・発表を中心とするプロジェクト学習。

  ・多種多様な角度から、児童生徒の興味を引き出し、持続・継続できることを考えた授業を行う。

  ・各教科の知識を横断的・総合的に活用。

  ・「児童・生徒の興味関心に基づく課題」、「アイデンティティ・地域の特色に応じた課題」を解決することを目指す。

  

 ② 実際に扱ったテーマ例 ≪大テーマ≫と小テーマ

   ≪アイデンティティ≫

    世界を動く人々,世界の補習校,働く人々

   ≪社会問題≫

    地球温暖化,世界の貧困問題,情報モラル,ゴミとリサイクル

   ≪日本の文化≫

    日本人とお米,日本のしきたり,日本の給食

   ≪日本の地理・歴史≫

    日本を旅しよう,日本人と震災,日本の服装の歴史,東京オリンピック

   ≪香港や中国の文化≫

    日中交流の歴史,香港の行事や習慣

  

 ③ 指導計画の例

2018年度「地球温暖化」の指導計画

(2) 国語活動

 ① ウォームアップ

   ・ 日本の童謡(季節・文化を知る)

   ・ 日本語を使ったゲーム活動(文字・語彙・表現・コミュニケーション) 

   ※ 「4.ウォームアップ活動例」参照

  

 ② 漢字学習

  ・ 新出漢字の導入:絵から漢字を考えるクイズ

  ・ 演習:漢検教材を利用した習熟度別学習

  ・ 参考教材:『どんどんつながる漢字練習帳』(アルク),『漢検過去問題集』(日本漢字能力検定協会)

  

  ③ 聞くこと

   ・ 問題を聞いて、答えを考えて、理由を説明する活動

   ・ 参考教材:『算数と国語を同時に伸ばすパズル』(小学館)

  

 ④ 読むこと

  ・ 読解教材:テーマ学習に合わせて選んだ教材をリライト

  ・ リライト:漢字は小4修了レベル,ルビ,文節区切り,短い文,適切な難易度の言い回しに変更

  ・ 音読:毎週の宿題で読んだ量でコンテストを実施

  ・ 参考教材:教科書(国語,道徳),各省庁・自治体・活動団体等のウェブサイト

  

  ⑤ 書くこと

  ・ 視写:読解教材の視写,書写コンテスト

  ・ 作文:テンプレートを活用

  ・ 参考教材:『子どものための論理トレーニングプリント』(PHP研究所)

  

(3) その他の工夫

  ・ 視聴覚教材の活用:PPTを使った授業,写真・イラスト・動画の多用

  ・ ペア活動の重視:互いの顔が見えるコの字型の座席,毎週の席替え

  ・ 日本のおもちゃの紹介:折り紙,あやとり,けん玉,紙風船,おはじき,竹とんぼ,ゴムとび 等

  

3.授業を進める上での課題と対策

 習熟度別ではなく学齢によるクラス分けをしているため、様々な課題があります。現時点では、以下のような取り組みを通して、課題に向き合っています。

  

 ① 日本語能力の差

  ・ ペア活動で児童が助け合う

  ・ 補助教員によるフォロー

  ・ 習熟度が高い児童への追加課題の用意

  ・ 保護者面談の実施(保護者の同席,クラス変更の相談)

  ② 日本語学習意欲の差

  ・ 魅力あるテーマづくり

  ・ 日本の文化の紹介

  ・ ゲーム要素のある活動

  ・ ポイントや表彰制度

 ③ 授業内の他言語での発言

  ・ 他児童によるフォロー

  ・ 教員が日本語に直して聞き返す

  

4.日本語ウォームアップ活動例

 継承日本語科で実際に扱ったウォームアップ活動をご紹介します。簡単な準備で実施でき、説明を含めても 10 分程度でできる活動ばかりです。 授業の始まりに日本語のスイッチを入れるのにも、疲れた時に活動の合間で切り替えるのにも、授業が早く進んで少し時間が余ってしまった時にも、便利です。

日本語ウォームアップ活動一覧

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