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テーマ7.

ICTを活用した遠隔での教育の質向上のための プログラム開発

2020年11月:サンホセ日本人学校「6つの帽子思考法を活用した実践」

報告:サンホセ日本人学校 宮本豪先生 <担当教科:国語(中)・社会(全)・図工(全)・美術・道徳(中)>
ヒアリング:AG5研究補助員 関温理
問い:合同遠隔授業の工夫した点

合同遠隔授業において効果を発揮した手立てについて、実際の事例を挙げながら2つ紹介したいと思います。

まず、話し合いの思考法として紹介するのは『6つの帽子(シックス・ハット)思考法』です。

 

話し合いの際に6つ(6色)の視点【中立的視点】【感情的視点】【肯定的視点】【批判的視点】【創造的視点】【思考プロセス的視点】を設定し、全員が同じ視点で意見を述べることで、賛成・反対といった狭い視野で対立することなく、物事を多面的・多角的に捉えることができます。また、視点が明確に定まっているため考えやすく、発言しやすい特徴があります。

合同授業で話し合いを行う場合、自分の学校・学級の友達とは異なり、どうしても活動の際に緊張感が伴います。考えが頭に浮かんでも「こんなこと言っていいのかな」「どう思われるかな」「誰かが話したら言おうかな」というように最初はなかなか声に出しにくいものです。交流の機会が少なければ尚更でしょう。

しかし、6つの帽子を使うことで、「理由を言わなくても何となく思ったことでもいいんだ【:感情的視点】」「とにかく良いと思ったことを言えばいいんだ【:肯定的視点】」といったように、「今」「何を」言葉にすればいいかが色によって示されているため、まだ人間関係が構築されていない間柄であっても、発言しやすい環境が設定できました。

 

本実践では「若い世代の農家を増やすためにどうしたら良いか」という題材において、解決策として「食べる通信(食材付き情報誌)を制作する」という提案が挙がりました。この提案について、【:肯定的視点】では、「生産者の生活や栽培の様子が分かる」「食材がついてくるから魅力が伝わる」「生産者の人生を知るとやってみたくなる」など多様な意見が出ました。

 

また、【:創造的視点】では、「農業体験の告知ページを作る」「大変さだけでなく、取りかかり易さについても伝える」「手紙やSNSのやりとりができるようにする」などのアイデアが挙がりました。友達の意見に「なるほど」「それは浮かばなかった」「〇〇さんの意見に加えて…」などといった反応も多く、普段あまり発言できない子どもも発表することができました。

 

このように、6つの帽子で「どのように」考え話せばいいかを示すことで、合同授業においても活発な意見交換を実現することができました。

 

続いて、課題解決への意欲を高める取組みについて紹介します。

 

本実践では、学習課題(学習における問い)を解くヒント(以下、「仮解答」)を、導入時に提示しました。仮解答の例としては、

・「なぜ食料品の輸入が増えたのだろうか」→『日本人が外国人になったから』

・「国産の食料品はなぜ安全なのか」→『見えるから』※

といったものです。仮解答は抽象的なものにすることで、子どもの知的好奇心を刺激し、「知りたい!」という意欲向上につなげることができました。

また、仮解答を明確な解答にするため、子どもたちには複数の資料から多角的に調べていく場を与えました。それぞれの子どもに異なる資料を配布し、そこから読み取ったことを互いに伝え合い、関連付けさせる場を設定します。例えば、本実践における授業の一つ(上記※)では、

A「お肉の謎の番号」…トレーサビリティについての資料

B「たくさんの顔」…生産者の顔が見える工夫についての資料

C「おいしさアプリ」…野菜の新鮮さや糖度などが調べられるアプリについての資料

D「食べる通信」…生産者の人生が記された食べ物付き情報誌についての資料

といった資料を提示しました。

 

読み取ったことを、対話を通して関連付け、新たな気付きを得ることがこの合同遠隔授業のゴールでした。

これらの関係性を視覚的に比較しやすくするために、「シャカイカチャート」を利用しました。児童は「シャカイカチャート」に調べた情報を整理し、友達との話し合いを通して、仮解答が意味することを自分の言葉でまとめることができました。

 

 

このように、子どもの協働的な学びが成立するように、視点の与え方を工夫することによって、合同遠隔授業においても楽しく意欲的に、そして積極的に関わり合って学ぶことができたと考えます。新しい友達の考えに触れることで、子どもたちはより一層学びを深めることができました。