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テーマ7.

ICTを活用した遠隔での教育の質向上のための プログラム開発

2021年1月:サンホセ日本人学校「児童・生徒の変化」

報告:サンホセ日本人学校 宮本豪先生 <担当教科:国語(中)・社会(全)・図工(全)・美術・道徳(中)>
ヒアリング:AG5研究補助員 関温理
タイトル:2020年度の実践を振り返って

サンホセ日本人学校(以下:サンホセ)と、アグアス日本人学校(以下:アグアス)は、2020年度において多くの遠隔合同授業を実施してきました。本校は小規模学校のため、児童が一名しかいない学年もあり、アグアスとの遠隔合同授業を通して、児童の変化が多くみられました。今回は、その児童の変化を紹介します。

まず、通常の授業時でも他の児童の意見に関心を持つようになりました。本校では一名や二名クラスが多く、なかなか同年代の友達の意見に触れる機会がありません。自分の意見を発言し、教師の話を聴きそれで終わってしまうことが多いのです。そのため、他者がどのように考えるだろうかと意識したり、自分の意見と他者の意見を比べ、同じところや、違うところをみつけたりする機会を設定することは難しい状況にありました。しかし、今年度の遠隔合同交流を通し、児童同士の交流が進むにつれ、同年代の多様な意見に触れる機会を持つことができました。その結果、遠隔合同授業以外の場面で「私はこう思うけど、〇〇ちゃん(アグアスの児童の名前)だったらどう考えるだろう〜?」といったようなアグアスの児童に関心を持って思考をする様子がみられるようになりました。このように、遠隔合同交流を通して、遠く離れた友達と繋がることで、自分以外の意見に関心が向くようになりました。

それに伴い、他の児童の意見をよく聴くことができるようになりました。前述したように、本校は少人数学級が多いため、授業では児童自身が「話す」ことが中心になり、先生以外の誰かの意見に耳を傾ける機会は簡単には設定できません。そのため、特に低学年の頃から一人学級で育ってきた児童などは、友達の話を目を見て聞いたり、相槌をうったりしながら聴くという姿勢が身に付いているとは言い難いです。質問をしたくともどう質問して良いのか迷ってしまうこともあります。これは、学力というよりはコミュニケーション能力に近いものでしょう。

 

しかし、遠隔合同交流において、同世代の仲間と触れ合うことでこうした児童に変化が見られました。次第に自己主張を抑え、相手の意見をじっくり聴くようになったり、自分の考えと相手の考えに違いがあると、質問をしたくなったりするようになったのです。遠隔交流時に「友達がなんていうかワクワクする!なんて発言するかすごく気になる!」と、すごく生き生きとした表情で話す児童が印象的でした。こうした経験を経て、少しずつ聴く姿勢や、意見の交流の仕方を学んでいくことに遠隔合同交流の価値を感じられました。