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テーマ7.

ICTを活用した遠隔での教育の質向上のための プログラム開発

2021年6月:サンホセ日本人学校「新しくできた活動」

対談:サンホセ日本人学校 宮本豪先生 
ヒアリング:AG5研究補助員 関温理
タイトル:「新しくできた活動」

今回は、遠隔合同授業を行う中で、新しく生まれた活動についてサンホセ日本人学校の宮本先生に聞いてみましょう!
  1. 遠隔合同授業(オンライン授業)を行う中で、新しくどのような活動が生まれましたか?

  2.  

主に以下の7つの新しい活動が生まれました。

A.対話ルーム(知の探求部屋)

B.遠隔合同学級活動

C.遠隔教員コミュニティ

D.zoomによるゲストティーチャー活用

E.異学年合同授業

F.オンライン芸術館(オンライン鑑賞会)

G.遠隔合同スピーチ大会

 

  

具体的にどのような取り組み(工夫)をされましたか?

 

A. 対話ルーム(知の探求部屋)

Googleスプレッドシート上で作成した対話ルームでは、本校の中学部1年生の生徒が、アグアス日本人学校(以下:アグアス校)の生徒と道徳の授業で新たに生まれた「問い」について対話を重ねました。そうすることで、道徳の授業内では議論できなかった新たな問いについて深く考える機会となりました。問いのテーマは「誰かにお願いするっていいこと?」「意見を言えない子(言うのが得意ではない子)はどうすればいいの?」などでした。休み時間など隙間時間に利用することができたため、時間を合わせる必要がなく、気軽に連携校であるアグアス校の生徒と会話をすることができました。

 

B. 遠隔合同学級活動

遠隔合同学級活動では、他校の同級生とオンライン上でお楽しみ会を企画して実行したり、話合い活動を行ったりしました。例えば、これまでの授業におけるやり取りで知った、相手校の生徒の興味関心に合わせてゲームを考えました。具体的には、絵が好きな子が多かったので、ロイロノートやzoomのホワイトボード機能などを活用し「お絵かきリレー」や「絵描きクイズ」を行いました。(実施学年:小6)

 

C. 遠隔教員コミュニティ

サンホセ日本人学校(以下:サンホセ校)とアグアス校の教師が交流できるグループチャットをGoogle Chatで作成しました。主に小学校低学年部、中学年部、高学年部、中学校部の4つを作成し、合同授業の計画や、授業の相談、教材の共有などを行っています。

 

D. zoomによるゲストティーチャー活用

様々な教科でゲストティーチャーを呼んで、講演やインタビュー、討論会を実施しました。例えば、社会科の情報の学習ではNHK記者の方、食料生産の学習ではJAの職員の方、総合的な学習の時間では、医者、キャリアコンサルタント、JTBやPanasonicの職員の方々をゲストティーチャーとして招き、講義を行っていただきました。(実施学年:小3、小6、中1、中2)

 

E. 異学年合同授業

学年は異なっていても、各学年の目標に合わせて合同で授業や活動を行いました。総合的な学習の時間による発表の交流や、各教科においても異学年合同授業を実施しています。例えば、数学科の「文字の式」を中1・中2・中3の生徒で行ったり、社会科では中2・中3で「戦国武将プレゼンバトル」を行ったりしました。「戦国武将プレゼンバトル」とは、中2の生徒が織田信長派と豊臣秀吉派に分かれ、どちらが戦国武将として優秀だったのかを発表し、競う取り組みです。中3の生徒はその発表を聞いて、どちらの武将が優秀だったのかを判定するだけでなく、さらに武将に関する新しい豆知識を中2の生徒に教えてくれました。

 

F. オンライン芸術館(オンライン鑑賞会)

図工や美術で作成した作品をGoogleドライブ上で共有することで、遠方の友人の作品を鑑賞することができました。また、自身の作品の工夫したところなどを紹介するプレゼンテーションを動画で作成し、その動画を共有することもありました。(実施学年:全学年)

 

G. 遠隔合同スピーチ大会

国語のスピーチ大会を合同で開催しました。互いのスピーチを聞き、感想や質問を出し合い、交流を行いました。工夫した点は、ルーブリックの共同作成です。聞き方と話し方のルーブリックをS・A1・A2の到達度別に分け、共通の認識をもってスピーチ大会を行うことで、目指すべき目標が定まった活動となりました。(実施学年:中1)

 

 

それらの取り組みをして何か変化はありましたか?

 

A. 対話ルーム(知の探求部屋) 

子どもたちは、気軽にコミュニケーションが取れることに喜びを感じていました。また、相手と自分の考え方の違いに興味を持つことができました。

 

  • B. 遠隔合同学級活動

    一人学級のクラスでは、これまでできなかった話合い活動などができることや、お楽しみ会を一緒にできる友人がいることに喜びを感じていました。また、連携校の生徒同士で行う企画などを通して、相手とのコミュニケーションの取り方について学習する機会となりました。

  •  

  • C. 遠隔教員コミュニティ

    合同授業への抵抗が激減し、合同授業の日常化が実現しました。なぜなら連携校の先生方と気軽に連絡を取り合えるようになったためです。チャット機能を使用することで、気軽に意見交換や教材共有などができるようになりました。そうすることで、相手校の教員との距離感が縮まり、その結果、合同授業への抵抗もほとんどなく先生方が協力して行うことができるようになりました。

    また、サンホセ校は同学年の担任がいないため、同学年の先生方と指導について相談できるようになったことも大きな変化でした。

     

    D.zoomによるゲストティーチャー活用

    ゲストティーチャーを日常的に呼べる環境になったことです。今までは、ゲストティーチャーの活用は何かと調整が必要で、負担に感じることがありました。しかし、打ち合わせから実施まで全てzoomで行うことで、ゲストティーチャーの方に実際に来てもらう手間が省けるため、以前よりもゲストティーチャーを活用しやすくなりました。

    また、子どもたちはzoomを通して多様な人々に出会い、彼らの生き方や人間性に刺激を受けました。

     

    E. 異学年合同授業 

    下級生は、上級生との活動を通して、これから目指すべき姿や、今の学習がどう今後繋がっていくかの見通しを持つことができました。また上級生は下級生の活動に参加することを通して、これまでの学習の振り返りの機会となりました。

     

    F. オンライン芸術館(オンライン鑑賞会)

    他の人の作品を通して、自身の作品を振り返ることができるようになりました。今まで、他の人の作品を見る機会がほとんどありませんでしたが、オンライン芸術館を作成することで、様々な作品に触れることが可能となり、友人の作品に刺激を受けたり、時には参考にしたりすることができるようになりました。

    また、生徒は連携校の友人の作品を見ることだけではなく、彼らから作品の感想をもらうことも楽しみの一つとなりました。

     

    G. 遠隔合同スピーチ大会

    遠隔合同スピーチ大会は、本校の生徒にとって多様な意見や考えに触れる機会となりました。本校は少人数学級のため、なかなか自分と異なる意見に出会ったり、自身の意見を誰かと比較したりする機会がありませんでした。しかし、遠隔合同スピーチ大会では、複数の同級生が参加し、彼らの前で発表をしたり、発表を聴いたりする中で、多様な意見や考えに触れる機会を設けることができました。その結果、生徒の学習に対する意欲がより一層高まりました。

     

    今後どんなことに挑戦してみたいですか?

     

     今後は、挑戦してみたいことは3つあります。一つは、VR体験交流、二つ目は、合同学級通信作成、そして交流ルームを作ることです。

     一つ目のVR体験交流会では、例えば理科の天体の学習において、合同学習でVRゴーグルを互いに身につけて「星座観測」アプリを起動することで、星座や星の動きを方角に合わせながら観察したり、観察しながら話合いを行うことができると考えます。また、互いの学校を360度カメラで撮影することで、相手校の教室に実際に行ったような感覚をもつことができるでしょう。このような工夫が可能になれば、よりオンラインによる結びつきは現実的でワクワクするものになると思っています。

     二つ目は、互いの情報をもっと交流する場として、合同学級通信を作成することです。この通信を通して、連携校との日常的な交流を家庭に発信することも可能になります。

     三つ目は、交流ルームを作ることです。例えば、その日の学級の様子などを伝え合う共有掲示板のようなものを作成し、連携校と交流ができるようにしたいと考えます。

     

    今後も新しいことに挑戦しながら、研究を進めていきたいと思います。