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テーマ7.

ICTを活用した遠隔での教育の質向上のための プログラム開発

2021年6月:リオデジャネイロ日本人学校 対談「新しくできた活動」

対談:リオデジャネイロ日本人学校 吉村正浩先生
ヒアリング:AG5研究補助員 関温理

今回は、遠隔合同授業を行う中で、新しく生まれた活動についてリオデジャネイロ日本人学校の吉村先生に聞いてみましょう!

① 遠隔合同授業(オンライン授業)を行う中で、新しくどのような活動が生まれましたか?

  1. 1. リオデジャネイロ日本語モデル校との交流
  2. 2. リオデジャネイロ連邦大学との交流
  3. 3. OGやOBとの交流
  4. 4. 創立50周年記念合唱ビデオの作成、写真(ビデオ)で振り返る「50年のあゆみ」YouTube限定配信

 

② 具体的にどのような取り組み(工夫)をされましたか?

1.リオデジャネイロ日本語モデル校との交流

この交流の目的は、「はなしをしっかりきこう。カメラをみてつたえよう。つたわったかたしかめよう!」「ゆっくりはっきりしゃべろう!ポルトガルごをつかってみよう!」「リオデジャネイロ日本語モデル校の人たちとなかよくなろう!」の3つです。この取り組みでは、本校12名、リオデジャネイロ日本語モデル校40名、合計52名の児童生徒が参加しました。実施するに当たり、多くの工夫が必要でした。例えば、Zoomのホストはデュアルモニターにして、一つの画面は参加者管理をし、もう一つの画面は交流内容の把握のために使いました。

 

また、個人での交流のために、一人一台のタブレット端末を使用しました。その際、ハウリングが起こりにくいように、グループ別に少し離れた場所を準備し、グループで一台だけがオーディオ接続し、できる限り会議用マイク・スピーカーをUSB接続して使うようにしました。

 

また、振り返りが共有できる場としてPadletを使用しました。Padletは、児童生徒が掲示板に振り返りや感想を書き込み、他の人がコメントをできるような機能が備わっています。そのため、児童生徒は交流校の生徒さんたちと授業外の時間もコミュニケーションを図ることが可能となり、交流を深めることができました。今回は、教師、児童生徒に加え、保護者の方にも参加してもらうことで、多くの人の交流の場となりました。

 

2.リオデジャネイロ連邦大学との交流

本校の児童生徒は、リオデジャネイロ連邦大学(以下:連邦大学)の日本語を学ぶ学生さんたちとオンライン上で交流を行いました。この交流の目的は、「日本に興味を抱くブラジル人学生とテーマごとに交流することで、日本文化を発信する機会とし、またブラジル人の考え方やブラジルの文化への理解を深める」ことです。2年前までは、本校の児童生徒が連邦大学を訪れ学生さんと交流を深めたり、本校の文化祭の劇に連邦大学の学生さんに参加してもらうなどの交流がありましたが、新型コロナウィルスの影響で去年は実施できずにいました。しかし、今年はオンラインで実施することができました。

 

具体的には、二つのことを行いました。一つ目は、「リオデジャネイロ音頭」を一緒に踊りました。事前に、数年前に連邦大学との交流で作成した「リオデジャネイロ音頭」のビデオを連邦大学に送り見ておいてもらいました。そして、当日は、2021年バージョンとして一部変更した踊りを本校の児童生徒が連邦大学の学生さんに画面を通して教えました。本校の児童生徒はリオデジャネイロ音頭の変更点を考えて踊りを伝えることを通して、リオデジャネイロの素晴らしさを改めて知ることができただけでなく、連邦大学の学生さんたちと一緒に踊って楽しむことができました。

 

もう一つは、ブレイクアウトルームで4つのグループに分かれ、それぞれのグループで自己紹介や文化交流を行いました。例えば、連邦大学の学生さんたちは、ブラジルの言葉やことわざを使ったクイズを準備してくれたり、本校の児童生徒は、漢字の成り立ちやことわざについてのクイズ、絵のしりとりなどを行いました。本校の児童生徒は、週に一度ポルトガル語の授業があるため、ポルトガル語で司会を行ったり挨拶をしたりして、普段の成果を発揮することができました。また、連邦大学の学生さんも普段学んでいる日本語を使って交流を楽しんでいる様子でした。

 

去年は、実施できなかった交流会でしたが、少し工夫をすることでオンラインでも有意義な時間を過ごすことができ、両校の結びつきをより一層強める交流会となりました。

 

 

3.OGやOBとの交流

本校の児童生徒は、本校創立初期の先輩方とのオンラインでの交流を通して、彼ら自身の将来や夢について考える機会となりました。この取り組みは、44年前にリオデジャネイロ日本人学校を卒業した6期生の卒業生が声をかけてくださり始まった活動です。現在、宇宙ステーションの開発に関わっている方や、東京オリンピックのロボットの開発に携わっている方、ブラジルの大学教員として働かれている方など様々な分野で活躍されている先輩方のお話を聴くことで本校の児童生徒は非常に刺激を受け、将来について考えるきっかけとなりました。

 

2回目の交流会では、OG・OBの方が現在のリオデジャネイロ日本人学校の様子を知りたいということで、本校の4・5年生が中心となって学校紹介ビデオを撮影、編集した作品を見て頂き交流を深めました。それに加え、当時リオデジャネイロにあった造船会社についての話を聞かせていただくことができました。普段はなかなかお会いすることができない先輩方から当時の学校や街の様子を伺うことができ、非常に実りの多い交流会となりました。

 

4.創立50周年記念合唱ビデオの作成、写真(ビデオ)で振り返る「50年のあゆみ」

学校創立50周年記念の取り組みとして、本校に在籍・勤務していた方たちなどから参加者を募り、校歌の合唱ビデオを作成しました。また、その他に「50年のあゆみ」として関係者から写真を提供していただき、記念冊子やホームページ等の写真なども取り入れて、一つのビデオを作成しました。

この2つを保護者が参加する記念式典で流し、YouTubeで限定配信(3日間、関係者のみ)しました。

 

③その取り組みをして教師自身の変化や子供たちの変化はありましたか?

【教師自身の変化】

  • 教育について、より多様な意見を出し合い、より協力することができるようになりました。本校の教師は人数が少なく、同じ教科や学年の担当がいないため、相談することが難しい場合がありました。オンラインで他校の教師と相談することで、多様な意見を出しあい、より良い授業のために協力することができました。
  • 遠隔授業やICTの活用などについて、数多くのオンライン授業を行い、スキルが高まりました。新型コロナの影響で、本校でも各家庭や学校をつないで遠隔授業や行事を行う機会が多くありました。また、この3年間の研究により、サンパウロ日本人学校等と遠隔教育で研修や授業を行い、リオデジャネイロ日本語学校やリオデジャネイロ連邦大学、OGやOBなどとオンラインでつながる機会も持つことができました。 それらの実践の中で、課題や改善策も多く見つけ、共有することで、そこでの学びを日々の授業に活かすことができました。
  • 子どもたちが、いかに情報を集め、選択し、まとめ、発表、交流、協働するかについて、より考えるようになりました。また彼らが日頃の授業で培った力を、遠隔合同授業の中で発揮してより高め、また日頃の授業にフィードバックできるように取り組みました。
  • 遠隔合同教育を、より円滑に効果的に実施できる環境整備について考えるようになりました。 例えば、校内のWi-Fi環境を良くし、機器を揃えるだけでなく、それをどう設置し、どの場面でどう使うと、円滑に効果的に使えるのか話し合い、実践を積み重ねてきました。これからも引き続き研修や実践を積み重ねていきたいと思います。

 

【子どもの変化】

  • 相手の言いたいことをじっくり考え、自分の意見をしっかり伝える工夫をし、協力して話し合うことができるようになってきました。オンライン上では、対面での授業や話し合いよりも情報が伝わりにくいことが多いです。また、本校は少人数であるため、同学年の児童生徒との交流や学校外の人との交流が少ないので、オンライン上での様々な人と関わる機会がとても貴重な機会となります。他者と工夫してコミュニケーションをとる経験を積むことで、上記のような変化が生まれてきたのだと思います。そしてそれが、日頃の学校生活でも生かされていると感じています。
  • ICT活用能力が高まりました。例えば、インターネットによる情報検索、Zoomやgoogleスライド、googleドキュメント、iMovieなどを遠隔合同授業で繰り返し使用したことで、日常の授業の中で活用することができるようになってきました。
  • 遠隔合同授業を重ねる中で、日頃から、「サンパウロ日本人学校の子はどう考えるだろう」というように、相手意識を持ちながら、授業を受けるようになってきました。自分の意見を言うだけでなく、他の人はどう考えるかについても、意識するようになってきたということは非常に大きな変化だと感じています。

 

④今後どんなことに挑戦してみたいですか?

 今後は、サンパウロ日本人学校と日常的に合同授業や、合同研修を行っていきたいと考えています。また、サンパウロ以外の日本人学校や日本の学校、現地校やインターナショナルスクール等との交流もしていきたいと考えております。 ただ交流をして終わりではなく、子どもたちが協働できる取り組みを行っていきたいと考えています。

 

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