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テーマ7.

ICTを活用した遠隔での教育の質向上のための プログラム開発

2021年3月:サンパウロ⽇本⼈学校 今年度を振り返り及び、2021 年度の研究計画

報告:サンパウロ⽇本⼈学校 ⼤⾕⽂⼈(R2年度 研究主任)
目 次

1.今年度の成果・効果

(1)遠隔研修を通して

(2)⾃校での授業や学校⾏事を通して

(3)外部講師による職業講話を通して

(4)学校プロジェクトを通して

(5)SPRJ合同遠隔授業を通して

2.まとめ(次年度に向けて)

 

1. 今年度の成果・効果

 

(1)遠隔研修を通して

 4校合同研修会ではアグアスカリエンテス⽇本⼈学校(以下 AC 校)・サンホセ⽇本⼈学校(以下:SJ 校)の合同研究の取り組みを知ることができた。例えば「ロイロノートスクール」や「ルーブリック評価」を有効に活⽤し、遠隔教育をより円滑に⾏っている点がとても参考になった。

 また、岸先⽣から遠隔教育に関する指導⽅法を何度も指導していただいた。先⽣から教えていただく中 で、校内でも「google スライド」や「google ジャムボード」を活⽤して授業実践を⾏う教師が出てきた。また、「グラフィックレコーディング」などの⽅法も教わり、指導⽅法の引き出しを広げることができた。

 サンパウロ⽇本⼈学校(以下:SP 校)、リオデジャネイロ⽇本⼈学校(以下:RJ校)の研修の取り組みでは昨年度より、教師間の交流が活発になった。これにより、同じ部会の教師間で何度も話し合って授業研究を⾏ったり、互いの授業を⾒合ったりする機会が増え、指導法を 学ぶことができた。また研究授業の後には校内研修を⾏い、研究授業の成果や課題を話し合い、共有する ことで、研究をさらに進めることができた。

 

(2)⾃校での授業や学校⾏事を通して

(1)の遠隔研修を通して学んだ指導技術は各学年の授業でも⼤いに役⽴った。例えばある授業では話 し合いの中で⼦どもたちが「google ジャムボード」を活⽤し、KJ 法のように意⾒をあげていき、それを ⾒ながら、話し合いをさらに進めていくというものもあった。

 また⼀年間通して⼦どもたちがオンラインでの学習を進めたことで、⼦どもたち⾃⾝が⾃分の画⾯を共有して⼩グループで話し合ったり、チャット機能を使って意⾒交換をしたりすることもできるようになった。また、⽇本で⽣活しながら在籍する児童とも学校⾏事等で⼀緒に顔を合わせることができ、遠く離れた⽇本とつながりをもちながら過ご すことができた。

 

(3)外部講師による職業講話を通して

 新型コロナウィルス感染拡⼤を受けて、今年はいろいろな学校⾏事が中⽌される中、修学旅⾏も中⽌を 余儀なくされた。(⼩6は場所を変更して実施)そこで、講師の⽅々のご厚意により、講話をいただいた ことで⼦どもたちは実際に予定地には⾏けなかったが、お話の中からたくさんのことを学び、意義深い 学習ができた。これも遠隔による実践の⼤きな成果と考えられる

 

(4)学校プロジェクトを通して

(2)でも少し触れたが、今年は昨年在籍していた児童の半数近くが⽇本に帰国し、学校、家庭、児童⽣徒にとっても⾟い⼀年となった。しかし、その中で⾳楽科の教師を中⼼として遠隔を使った2つの学校プロジェクトを⾏ったことで、離れていてもつながりをもつことができ、学校として⼼を⼀つによりそえることができた。

 

(5)SPRJ合同遠隔授業を通して(課題も含む)

①⼩学校低学年部会

<成果>

  1. ⾃分の思いが相⼿に伝わるように⼯夫したり、発表を聞いた相⼿に感想や質問、よかったところが⾔えたりするなど相⼿意識が育っている⾯が⾒られた。
  2. 2年⽣が1年⽣にたくさんアドバイスをするなど、異学年とも協働して学習を進めることができた。
  3. 相⼿の学校のことや住んでいる地域についてより知ることができた。
  4. SP-RJ両校の教員が計画から指導まで協働して⾏うことができた。

<課題>

  1. 「⾝近な題材」を⼦どもたち⾃⾝が選択していくことが難しいため、題材設定をより考察していく必要 がある。
  2. 学習の定着を図るための振り返りの時間の⼿⽴てを考えていくことが必要である。

 

②⼩学校⾼学年部会

<成果>

  1. ⽣活環境、学年それぞれがちがう中で、回数を重ねるごとに話し合いがスムーズになり、協⼒して学習 を進めることができた。
  2. お互いの調べたことや情報を共有し合うことで、相⼿の住んでいるまちのことについて理解を深める とともに、⾃分の住んでいるまちのことについてもさらに理解をすることができた。
  3. google スライドを使って学習を進めたことで、操作にも慣れ、合同でできないときにも分担を分けて、 資料を作成するなど協⼒して発表の資料を作成することができた。児童の機器の操作スキルも向上した。

<課題>

  1. 学年にばらつきがあったこともあり、話し合いを円滑に進めるにはもう少し⼈間関係づくりの時間が必要であった。
  2. 交流学習だけでなく、普段の学習時からコミュニケーション⼒を磨いていくための指導をしていく必要性を感じた。
  3. 機器の操作に慣れているグループとそうでないグループに差が出てしまった。普段の学習から少しずつ機器に慣れさせていくことも必要だと感じた。
  4. ⼦どもたち同⼠で話し合いが進められるグループ、教師の⼿⽴てが多く必要なグループがあり、もう少し⼦どもたち同⼠で話し合いを進めていけるような⼿⽴てが必要だった。そのための⼿⽴てが少し難しかった。

 

③中学校部会

<成果>

  1. 本学習以外にも国語科の討論の授業やビブリオバトル(本の紹介)など合同で学習したことにより、⽣徒同⼠の関係を少しずつ築くことができた。
  2. 中間発表を何回か重ねることで、本番に向けてより内容を練り上げることができた。
  3. 3⼈1組のグループで学習を進めたことで、意⾒を⾔いやすくなり、⾃分の考えを積極的に伝えるとともに、相⼿の意⾒も受け⼊れながら協働的に学習を進めることができた。

<課題>

  1. 学習の過程が進んでいくと、内容によっては考えが⾏き詰まり、話し合いに深まりがなくなる。そのような場⾯で学習課題の提⽰の仕⽅を⼯夫したり、教師が効果的に⽀援を必要としたりする場⾯がある。
  2. オンラインでの話し合いのテンポや間合いの難しさなど、そのような点も考慮しながら指導の⼯夫を考えていく必要がある。

 

2.まとめ(次年度に向けて)

 

 2年⽬となった本研究だが、今年度は新型コロナウィルスの感染拡⼤を受け、各海外⽇本⼈学校では登校が難しくなり、必然的にオンラインで学習をすることを余儀なくされた。しかし、昨年度から本研究が始まり、昨年度遠隔教育のさまざまなことを学んだことで、そのノウハウをいかし、職員⼀同⼒を合わせて、まずは4⽉から児童⽣徒の学習機会を保障しながら教育活動が⾏うことができた。今は年間で予定されている学習計画も無事に終わろうとしている。

 

 実際には、初めは教師も児童⽣徒も家庭も⼾惑いと苦労があった。しかし、昨年度学んだことが急遽指導を⾏う上での⼤きな柱となり、共にこの「遠隔教育」を柱として学習を進めていく中で、少しずつ慣れ、またできることも増えていった。遠隔教育を通して⽇本とブラジル、サンパウロとリオデジャネイロ、いろいろな地とつながりながら学習を進めてきたことで、ともに学び、またそれぞれの地の様⼦をリアル タイムで感じながら学習をしたこともとても良い学びになったのではないかと思う。

 

 何より、遠隔教育の中で⼀つ⼀つできることが増え、その可能性を感じるようになってくると今度は教師が「⼦どもたちのために何ができるのか?」を必死に考え、「⼦どもたちのためにできること」に挑戦を繰り返してきたことが今年度の⼀番の成果である。遠隔教育(オンライン授業)の中で、異学年交流や出前・主張授業、⼩学部祭などの学部⾏事を⼯夫して実施するなど、児童⽣徒相互の縦のつながりを深め 合えたのも⼤きな成果の⼀つであったと認識している。挑戦によって得られた結果をしっかりと振り返り、そこで出てきた課題を次年度に向けて話し合い、研究をよりよいものにしていくことも不可⽋であ る。

 

 今年度の研究実践では遠隔教育の可能性をたくさん感じることができた。しかし、年度の後半に対⾯授業が認められ、学校に通えるようになると改めて遠隔での⼈間関係づくりやコミュニケーション⼒をどのように育てていくかということの難しさも感じた。遠隔教育の中でどのように⼈間関係を構築し、コミュニケーション⼒を⾼めながら教育を進めていくかについては来年度以降も研究が必要であると考える。

 

 年度を追うごとに着々と研究の進み具合が⾒える中で、来年はまとめの年度となる。今年度よりもさらに⾃校内、RJ校をはじめとした4校、AG5事務局の⽅々とつながりを密にしながら、より研究を進めていきたいと決意している。

 

2021年度(研究最終年度)の遠隔教育における本校の課題

遠隔の取り組みの中で、多様性を受け入れ、柔軟で豊かなコミュニケーション力を持ち、協働できる子どもの育成をねらいとする『人間関係づくり』をどのように進め、そのためにどのような「遠隔教育プログラム」を開発・提案していくか。

 

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